Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第15章 賢者
「例えば、情報を伝達させる時、まず出発点のエルヴィンが、口頭伝達を向かわせた旨を桃色の信煙弾を打ち上げ全員に知らせる。
それから、それぞれの班に伝達が届いた場合は、情報を受け取ったことを知らせるために桃色の信煙弾を上げる。
逆に、エルヴィンの班から桃色の煙弾が打ち上げられてから、なかなか伝達届かなかった場合は、茶色の信煙弾を上げるなりして、状況確認していけばいいんじゃない?」
ハンジが提案した状況確認の方法。それは、ヴァルトを伝達係として機能させるための、新たな信煙弾の作成だった。
エルヴィンも同じことを考えていたのだろう。ハンジの提案に首を縦に振って肯定の意思を見せた。
「あ、せっかくだし、もう一つ信煙弾を作ろう! 何か緊急の連絡をエルヴィンや他の班にしたい時とかあるでしょ? その時、ヴァルトに来てもらうための信煙弾も作ったら? 青とかどう?」
「ああ、その提案も採用しよう」
新たなハンジの意見に賛成したエルヴィンは、ポケットに入れておいたメモ帳にそれを書き記していく。
「おおよその位置は、信煙弾が上がった場所から特定してもらうか」
これは、フクロウの高い視覚と記憶力が活用される。例え遠い場所から信煙弾が打ち上げられても、人間よりも目が良いフクロウであれば、容易に位置を特定できるだろう。
加えて、煙が上がった場所を記憶することならば、可能なはずだ。
「兵士たちには、一人ひとり笛を持たせておくか。着陸の合図や細かい位置の特定に使えるはずだ」
聴覚を駆使して獲物の位置を特定できるのなら、笛の音から兵士たちの居る場所を探すこともできるだろう。
「まあ、いきなりこれらをこなすというのは難しいだろうから、暫く訓練が必要だと思うが……エミリ、どうだろうか?」
そこで、エルヴィンの視線は再びエミリを捉える。
エルヴィンのその聡明さを改め実感させられたエミリは、嬉しそうに微笑んで言った。
「私は良いですよ! まあ、後はこの子次第ですけど……」
本当に与えられた役割が嫌なら、ヴァルトは何もせずにのびのびと生きるだろう。
けれど、もし調査兵団で共に戦うことを選んでくれた時は、きっと訓練にもずっと付き合ってくれる。
エミリは、そう確信した。