Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第15章 賢者
「あ、もしかして……」
数分ほど考えようやく答えを見つけたのか、エミリは思いついたような顔を見せた。
「エミリ、わかったの?」
「うん。なんとなくだけど……」
「では、そろそろ答え合わせをしようか」
答えがわからずに難しい顔を見せるペトラとフィデリオに苦笑を漏らし、エルヴィンは切り出した。
「壁外では、長距離索敵陣形を使うだろう。陣形を開いている時、主に信煙弾で伝達を行う。しかし、そこには大きな穴がある」
信煙弾だけでは伝えられない詳細は、口頭で伝達を行っている。
そこには、情報が遅れるというデメリットがある。また、索敵が機能を失っていけば伝達が途中で途切れ、情報が届かない場合もあるのだ。
しかも、それだけではない。
情報はエルヴィンから発信される。ということは、一番最初に情報が行き渡るのは、エルヴィンの班である次列中央・指揮から最も近い班だ。
つまり、彼の班から距離が一番遠い位置に配置されている班に、伝達が届きにくいということである。
「簡単にまとめて言えば、情報が届きにくい。もしくは、届かないという欠点がある。ヴァルトを伝達役にする目的は、欠落したその穴を埋めることだ」
エルヴィンの解説にペトラとフィデリオは、「なるほど……」ようやく納得した表情を見せた。
難問が解けてすっきりしたのか、強ばっていた顔が緩んでいく。
「あ、でも……どうやって情報を知らせるんですか?」
ヴァルトは動物だ。もちろん、人の言葉を話せるわけではない。ということは……
「封書を持たせ、情報が届かなかった班、又は届きにくい班に、ヴァルトを飛ばす方法だ」
紙に書かなければならないというデメリットがあるが、それでも情報が行き渡らないことと比べるとリスクは低い。
「しかし、情報が届いていない班の状況確認は、どうやってやるんですか?」
「信煙弾の色を増やせばいいんじゃない?」
フィデリオの質問に答えたのは、エルヴィンではなくハンジだった。
エルヴィンには及ばないが、ハンジもなかなか頭が切れる人物だ。
エミリにヒントを与えていた時から既に彼の考えを理解し、それを機能させるための方法を考えていたのだろう。