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Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人

第15章 賢者


エミリは、そんなヴァルトに苦笑を漏らしたあと、エルヴィンの顔に視線を戻し話の続きを促す。


「その後、エミリを連れて拠点へ戻るリヴァイの後をこっそり追って、そのまま壁まで着いてきてしまったのだろう」

「そ、そんな単純な話だったんですか……?」

「いや、言葉にすると確かに単純なものに聞こえるが……逆の立場となって考えれば、そう簡単にできるものではないだろう」

「……確かに、それはそうですね……」


知能指数で言えば、人間の方が上だろう。
しかし、人間には鳥のような羽が無い。立体機動があっても、ガスが無ければ飛べない。壊れてしまえば、飛び上がることもできない。
そして、視力や聴力といった五感は、動物と比べて人間の方が劣る。

あの広く危険な壁外から、たった一人で壁に帰還することは、人間にとっては至難の業だ。


「フクロウは聴覚が優れている。我々が馬や立体機動で移動する音を聞き分け、我々の位置を特定することもできる。

それに視力も高いため、人間では捉えることの難しい距離にある物体も、フクロウの目でなら捉えることができるだろう。

加えて記憶力が良いのであれば、目と耳で得た情報を忘れることもない。

この三つの特徴を活用すれば、誰の力もなくとも一匹でここまで到達することも可能なんじゃないか?」


エルヴィンの考察に誰もが納得のいった表情を見せる。しかし、ヴァルトを壁外調査で利用することについての答えがまだ出ていない。


「あの、それで……どうやってヴァルトを伝達役として使うんですか?」

「今、殆ど答えを言ったはずだが……?」

「え……?」


答えとは、エルヴィンが話した考察のことだろうか。よく分からず首を傾げていると、「ああ、そういうことか……」とリヴァイが呟いた。


「え、そういうことって……」

「エミリ、もう一度エルヴィンの話を思い出してみて! それと”伝達”ってキーワードを繋げてみたらわかるよ」


眉をひそめて考えていると、ハンジが隣からヒントを出してくれた。

エルヴィンにされた質問とその考察、そして伝達という役割。エルヴィンが話した通りの順番で、もう一度内容を思い返してみることにした。

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