Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第4章 相棒
あの日、リヴァイは壁外調査には参加していなかった。
というのも、その頃はまだ地下街から調査兵団へ入団したばかりだった為に、彼を信頼していない者の方が多く、上からの指示で彼を壁外調査に出すことは許されなかった事が何度かあった。
あの日も多くの犠牲があり、兵士達は皆ボロボロだった。民衆からの非難の声はいつもより多く、精神的に追い詰められたことだろう。
そして、不運とは続くもの。壁が破壊されたのはその後だった。
壁外調査から帰還してきたばかりで、負傷兵が多いのは勿論のこと、体力も回復していない状態だった。
すぐに動けるような体勢では無かったのだ。
それでもそのまま兵舎に留まっているわけにはいかない。
たまたまキースが不在だった為に、代わりに当時分隊長であったエルヴィンが指揮を執った。
動ける者は、マリアの巨人の討伐。それをしながらマリアの住民を守るよう指示を出された。その際、リヴァイも出頭することとなった。
駆けつけた時は、既に多くの被害が出ていた。街の面影など一つも無かった。
瓦礫に潰されている者、巨人に食われた者……建物も道も皆、鮮血に染まっていた。
壁外と変わらない、地獄の世界。
それを見た途端、リヴァイは顔を顰めた。
『エミリ!』
そこで聞こえた青年の声。
リヴァイが視線を移すと、目に飛び込んで来たのは巨人から男の子を守ろうとする少女の姿だった。
巨人の手は、少女の目の前まで迫っていた。
リヴァイは立体機動を巧みに使い、そして、一直線に項を切りつけた。
倒れた巨人の上に着地し、振り向き逃げろと声を上げる。そのまま子供を抱き上げ、少女は走って逃げて行ったが、彼女は肩越しにリヴァイを見やる。
少女とリヴァイの視線が交わった。
彼女の瞳は、吸い込まれるような澄んだ目をしていた。
リヴァイは、少女が無事に青年の元に辿り着いたことを確認した後、自身の任務に戻った。