Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第4章 相棒
首を押さえながら馬小屋へ向かうハンジの後ろ姿に、心の中で真っ白なハンカチを振りながら見送る。
しかし、困ったことになってしまった。
(えっと……どうしよう……)
リヴァイと二人きりになってしまったのである。正確には二人と一頭だが……
サワサワと木々が揺れる音しか聞こえない。
気まづい、何を話そう。エミリは、話題探しに必死になっていた。
そして、思い出す。あの日、彼に助けられたことを……
(……そういえば、お礼、まだ言ってなかったんだ)
ちゃんと言わなきゃ。
エミリは口元を綻ばせ、そして、リヴァイに向き合う。
「あの、リヴァイ兵長」
「何だ」
リヴァイはチラリとエミリに目を向け、そしてまた視線を前へ戻す。
「私、兵長にお礼を言わなきゃとずっと思ってまして……」
「礼?」
昨日今日、出会ったばかりでエミリと会話をしたのもこれが初めてだ。なのに、何故礼を言われなくてはならないのか。リヴァイは、目を細め首を傾げる。
「……壁が破壊されたあの日、私はリヴァイ兵長に助けてもらったんです」
今でも鮮明に覚えている。
自由の翼を背負い、深緑色のマントを靡かせ、立体機動装置を自在に操り、巨人に立ち向かって行く姿を……
「男の子を庇って、巨人に捕まりそうになった時……兵長が巨人を倒してくださったんです」
「……」
エミリの話に耳を傾けながら、リヴァイは二年前の惨劇を思い出す。