Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第15章 賢者
「それより、そいつどうするつもりだ?」
そこへ、ずっと黙って話を聞いていたリヴァイが、再び会話に加わった。
彼の言葉に、エミリはヴァルトを見つめながら考え込む。
ウォール・マリアの森で過ごしていたヴァルトと最後に会ったのは、マリアが陥落する以前だった。
故郷が巨人に蹂躙されてからは、もちろん会えるはずもなく、母親のことで頭がいっぱいだったエミリは、ヴァルトの存在も忘れていた。
あれから約三年が経ち、こうして再会することができた。もちろん、とても嬉しい。このまま、ずっと一緒に過ごせたらいいと思う。
けれど、また森に帰してあげた方がいいのだろうか。
「……ヴァルトは、どうしたいの?」
そう問うても、ヴァルトは首を傾けてエミリの顔を覗き込むだけだ。
できれば、ヴァルトの好きにさせてあげたい。けれど、人間と動物、言葉が通じないのは仕方の無いことだ。
「お前が決めればいいんじゃねぇか?」
「え」
リヴァイの提案に、エミリは小さく声を漏らす。
「どうやってここに辿り着いたのかは知らねぇが、あの森からここに到達するまでかなり距離がある。にも関わらず、わざわざ着いて来た。それは、お前と一緒に居たかったからじゃねぇのか」
「……私と、一緒に……」
「こいつは、お前の判断に従うつもりなんだろう。お前が決めたことなら、何も迷うことはねぇってな」
ヴァルトは、その丸い目でじっとエミリを見つめている。何を考えているのか、正直わからない。
だけど、ヴァルトはきっと行動で意思を示した。エミリの元へやって来た理由を……
「私は、できることならこのまま一緒に居たいです」
このまま元いた森に帰すとなれば、もしかしたらもう、会うことは出来ないかもしれない。
巨人を絶滅させるまで、あとどれくらい掛かるかもわからないのだ。
しかし、ここに残すとしても問題がある。