Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第15章 賢者
鳥を捕まえるため奮闘中の兵士たちの騒ぎ声から、すぐに鳥がいる場所を探し出すことができた。そこは、いつも皆が立体機動の訓練で使用している演習場だった。
駆けつけたエミリたちが目にした光景は、網を手に走り回る兵士たちの姿。
例の鳥は、木々の合間を縫って、網を振り回す兵士たちから逃げている。
「鳥一匹に手こずりやがって……」
情けない部下の姿にリヴァイは呆れ顔だ。
どうしたものかと眺めていると、肩をポンポンと叩かれ「兵長、兵長」とエミリに呼びかけられる。
「何だ?」
「あの、降ろしてください!」
「あ?」
無茶をされては困るからおぶっているというのに、何を言っているのか。後ろから顔を覗かせるエミリを睨みつける。
「駄目だ。お前、何やらかすかわからねぇからな」
「兵長、お願いします!! あの子、きっと私を探してる! 私が呼びかけてあげなきゃ……!」
どうやらエルヴィンが思った通り、エミリはあの鳥の正体がわかるようだ。
エミリの口振りから、あの鳥は彼女に懐いているのだろう。そして、エミリがあの鳥を大切に思っていることも、彼女の言動から伝わってくる。
「……わかった。但し、しっかり俺の肩に腕を回してろ」
「はい!」
いつに増して我儘な奴だと内心呆れながらも、彼女の頼みに弱いのは、惚れた弱味というやつなのかもしれない。
「あ、でも……」
「どうしたの?」
急に沈んだ表情を見せるエミリの顔をペトラが覗き込む。何か問題でもあったのだろうか。
「……ねぇ、首から下げてた鈴と笛、どこに置いたの?」
エミリは、胸元に手を置きながらペトラに問いかける。
目覚めた時、隣に着いていたペトラが持っているかと思ったからだ。
「鈴と笛……って、あのフクロウの鈴?」
「そう! それ!」
「確か……エミリを医務室に運んでから、私が外したの。それで、丁度隣に居たフィデリオに、一旦それを預けたはず」
「じゃあ、誰かフィデリオを呼ん」
「必要ねぇよ。もういるし」
突然加わった声にビクリと体を震わせ、エミリは勢いよく声が聞こえた方へ振り向いた。