Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第15章 賢者
「行かせてください!!」
「ダメだっつってんだろ!!」
もはや駄々をこねるレベルにまで達しているエミリの無茶に、ケイジたちは疲れた表情を見せる。それでも怪我が悪化することを考えたらと、必死で問題児を押さえつけていた。
「あはは! 怪我しててもエミリは元気だねぇ」
「分隊長! 笑ってる場合じゃありません!! 分隊長からも何か言ってください!」
こういう時でも、呑気に笑い声をあげるハンジに小言を放つのはモブリットである。
「そんなこと言われても、何か言って大人しくしてくれるなら、いつもこんなに苦労してないでしょ!」
「それはそうですが……」
というか、エミリがこんなに無茶するのも、いつも自由奔放なハンジの影響なのではないだろうか……そんな気がしたモブリットは、軽く目眩を覚えた。
二ファたちから逃れようともがき続けるエミリ。そして、そんな彼女を必死に止めようとするハンジ班のメンバーたち。彼女らの声のボリュームがどんどん大きくなっていく。
それこそ、このままでは他の兵士たちに迷惑だ。
「兵長、どうしましょう……」
ハンジ班の攻防を静観しているペトラが、隣に立つリヴァイに助けを求める。もうリヴァイの言うことしかエミリは聞かなそうだ。いや、もしかしたらリヴァイの指示すらも跳ね除ける気がしかしない。
「ったく、仕方ねぇな……」
今日何度目かわからない溜息を吐き出し、リヴァイはエミリに背を向け腰を落とした。
「おい、さっさと乗れ」
「……へ?」
ケイジたちと掴み合ったままの状態で一旦大人しくなったエミリは、リヴァイの方へ顔を向ける。しかし、彼の言っていることがしっかりと理解できていないようだ。