Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第15章 賢者
「待て、リヴァイ」
「あ?」
機嫌を急降下させるリヴァイを宥めるように声を掛けたエルヴィンは、再び兵士の方へ向き直った。
「いま、妙な鳥……といったが、どんな姿をした鳥だった?」
「それが、まだしっかりと姿を確認出来ていないんです……ただ、大きさはかなりあったように思います。いま、他の者たちが捕らえようと網を持って駆け回っているのですが……」
「はぁ……何やってんだ、あいつら」
普段、巨人という大きな敵と戦っているというのに、鳥一匹に振り回されるとはどういうことなのだと。リヴァイは頭を抱えたくなった。
苛立ちを見せるリヴァイとは反対に、エルヴィンは顎に指を添え何やら考え事をしている。
「…………では、何か印になるようなものは身につけていなかったか?」
「印……あ、そう言えば! オレンジ色のリボンのようなものを付けて飛んでいました」
「え」
オレンジ色のリボン。それにエミリが小さく反応を見せたのを、エルヴィンは見逃さなかった。
「エミリ、君はその鳥の正体がわかるのではないか?」
エミリに向き直ったエルヴィンが発した言葉に、他の者たちも一斉にエミリに注目する。
「もしかしたら、ですけど……あの、その鳥がいる所に行かせてください!!」
そう言ってベッドから降りようとするエミリ。まだ怪我を負っているというのに何を言い出すのかと思えばと、慌ててハンジ班の面々が押さえる。
「エミリ、ダメだよ! まだ安静にしてなきゃ!!」
「お前なぁ、自分がどんだけ酷い怪我負ったのかわかってんのか!?」
「鳥は何とかして俺たちが捕まえてくるから、待ってろ!」
二ファとケイジとゴーグル(あだ名)が、意地でも飛び出そうとするエミリを必死に説得しようと試みる。しかし、それで折れないのがエミリという人間だ。
「イヤです! もし、私が思っている子であれば、大人しく言うことを聞いてくれるはずです! 皆さんが捕まえようとすれば、余計に警戒して暴れちゃいます!!」
じたばたと暴れるエミリを三人係で押さえつける光景は、何とも言い難いものだった。横からそれを眺めるペトラの表情は、今日一番の呆れ顔である。