Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第15章 賢者
「ハンジさんが医務室に入ってきた後に、団長たちも入ってきてたんだけど……」
つまり、完全に二人の世界に入り込んでいたため、それに気づいていなかったようだ。
なんだか少し恥ずかしくなったエミリは、ほんのりと頬を赤く染める。
「す、すみません……」
「構わない。それより、本当に君が無事でよかった」
ベッドの脇に移動したエルヴィンが、優しくエミリの頭を撫でる。エミリは嬉しそうに微笑みながら、大きく頷いた。
「さて、君の今後についてだが……二週間ほど安静にするように、とのことだ」
「二週間、ですか……」
三ヶ月入院と比べれば全然問題ない方だが、それでもじっとしていることが苦手なエミリにとっては、二週間も十分苦痛だ。
しかし、あのまま命を落としていたことを考えると、二週間の入院など安いものである。
「それにしても、よく生きていたな。リヴァイからの話によると、狼に襲われたそうだが……」
エミリが二週間も安静にしていなければならない理由は、崖から落下したことだけではない。狼に負わされた傷が酷かったこともあった。噛み付かれた腕は、骨まで貫通していた程だったのだ。
「一体、どうやって狼から逃れることができたんだ?」
「それは……」
「だ、団長!!」
エミリが答えようとしたその時、一人の兵士が慌ただしく医務室に駆け込んできた。
彼の様子に何かあったのだろうと察したエルヴィンは、落ち着くように促し彼の元へ歩み寄る。
「何があった?」
「そ、それが……妙な鳥が兵舎の中に入り込んで、飛び回っているんです!」
まさか騒ぎの元凶が鳥であるとは思わず、一同は呆気にとられる。
「ったく、何事かと思いきや……鳥ごときで騒ぎやがって」
リヴァイは、くだらないと舌打ちを鳴らしその兵士に冷たい視線を向ける。
この医務室には、まだ怪我で横になっている兵士はたくさんいる。そんな中、鳥ごときで騒がれてもいい迷惑だと。