Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第15章 賢者
太陽が完全に顔を出し、暗い森に明かりが灯る。昨夜の雨が嘘のように空は青さを取り戻していた。
拠点で一夜を過ごした調査兵団は、出発に向けて準備を始めている。
そんな中ハンジは、彼女の部下と共にリヴァイたちの帰りを待っていた。彼の腕の中にエミリが居ることを信じて。
「……兵長たち、遅いですね……」
ハンジの隣で時計を見ながら、ケイジがポツリと呟く。
リヴァイがエミリを探しに行ってから、既に一時間以上が経過していた。
リヴァイのことだから恐らく怪我はしていないだろうが、それでも心配せずにはいられない。
「エミリ、見つかったんでしょうか……」
二ファは、地面に視線を落としたまま顔を上げようとしない。
調査に出る前、エミリはいつもの明るい笑顔を浮かべ、一緒に話をしていたのに、当たり前の存在が傍にいない。その現実に胸が苦しくて仕方が無かった。
「……あの」
そこへ加わった声に、ハンジたちは振り返る。
目に映ったのは、胸元で祈るように両手を握り締めたペトラだった。
「私もご一緒していいですか……?」
リヴァイが探しに出た後も、やはり不安で眠れなかった。出立の準備をしていたが、睡眠不足で作業に全く集中できずにいた。そのせいで、オルオに休んでいろと言われたため、ハンジたちと共にリヴァイとエミリを待つことにした。
「もちろんだよ」
浮かない顔をしたペトラを手招きし、ハンジは自分の隣へ立たせる。彼女の頭を優しく撫でていた。
「ハンジさん!」
その時、二ファが声を上げて前に指を突き刺す。その声に、誰もがまさかと思って顔を上げた。
森から姿を現す一頭の馬。そう、リノだ。
そして、リノの背には二つの影。一つはリヴァイ。もう一つは……
「…………エミリ……?」
掠れた声を絞り出し、目に映った現実にペトラは涙を一筋流した。