Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第15章 賢者
「兵長!!」
ハンジが自己嫌悪に陥っていると、後ろから別の声が加わる。
それは、入団当初からいつもエミリと行動を共にしてきた親友のものだ。
「……ペトラ」
大泣きしたのだろう、とても目が赤く腫れていた。充血した大きな瞳で、ペトラは真っ直ぐとリヴァイの元へ歩み寄る。
「兵長、お願いします! 私も一緒に連れて行って下さい!!」
深々と頭を下げ、ペトラはリヴァイに必死に懇願した。
ペトラが拠点に到着したのは、ハンジ班の後だった。エミリの姿が見当たらないことに気づいた彼女は、フィデリオとオルオと共にニファに事情を伺い、そこでエミリが崖から落ちたことを教えられた。
足元から崩れるように地面に座り込み、顔を覆って涙を流すペトラ。
信じられないと言った表情で頭を抱えるオルオ。
俯いて表情の見えないフィデリオ。
三人が見せた反応が、ハンジに更に追い討ちをかけた。
どうせなら、エミリを助けられなかった自分を責めてほしい。けれど、三人はハンジを責めることは無かった。
「私も一緒に、エミリを探したい……エミリは、私の大切な人だから……兵長、お願いします!!」
突然いなくなった大きな存在に動揺を隠しきれないペトラは、リヴァイの腕を掴み同行を願う。しかし、リヴァイはそんなペトラの手をそっと離した。
「駄目だ。同行の許可は認めん」
「何故ですか!?」
「今のお前は、あいつがいなくなった事で自分を見失っている。そんな奴が、この少ない人数で巨人と遭遇してみろ。お前、冷静に戦えるのか?」
「それは……」
ペトラの戦績は把握している。そろそろ、自分の班に入れても問題ないとは思っているが、それでも今の彼女は連れて行けない。
また、時間が限られているため誰かを守りながらエミリを探している暇など無い。大人しく拠点で待ってもらっていた方が良い。
何より生きているとも限らないし、必ず見つかると決まった訳ではないのだから。
「おい、ペトラ! あんまり兵長に迷惑かけてんじゃねぇ!!」