Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第4章 相棒
「……何してる」
そこに、独特の低い声がハンジの意識を反らす。
その声の主は、リヴァイだった。自分の馬に会っていたのか、兵服には少し藁が付いている。綺麗好きの彼からは想像出来なくて、ハンジは思わず少し笑った。勿論、睨まれたためすぐに止めたが。
「やあ、リヴァイ!! 愛馬に餌やりでもしてたのかい?」
「……何だあれは」
軽くハンジの話をスルーし、視線は乗馬場を走り回るエミリとリノを捉える。そして、リノを見た途端、目を丸くした。
リヴァイもリノがなかなか人間に懐いていないことを知っていたからだ。
「…あの馬」
「そう、いつも独りで弟を守っていたあの子だよ。エミリにはすぐに懐いたんだ。彼女と似たものを感じたんだろうね」
「似たもの? 何だ、そりゃあ」
少し眉を顰めるリヴァイに、ハンジはフッと笑ってから、さっきエミリがリノに語りかけていた話をする。
「エミリ、あの日に母親を亡くしているそうなんだ。巨人に食われたらしくてね」
「シガンシナが陥落した日か…」
「うん。エミリには弟がいるらしい。彼もまた、調査兵団に入りたがっている変わり者でね、今年から訓練兵団に入団したそうなんだ」
「……そうか」
「エミリは、ずっと傍にいてあげたかったみたいだけど、それでも『大切な弟を守るため、強くなるために、ここに来た』と言っていた」
確かに、似ていた。
元々リノは、母親がいた時も弟の馬と共にいることが多かった。おそらく、エミリもそうなのだろうと、不思議と予想がついた。
母親を失い、姉弟が取り残され、姉は弟を守ろうとする。とても、似ていた。
「更にエミリは言っていた。あの子馬も、これから壁外で戦うために訓練を受ける。エミリの弟も同じように訓練していると。そして、『似ているね。きっと分かり合える』そう言って、あの子に触れていたよ」
「……」
よく、分からなかった。
確かに境遇は似ているが、人間と馬がたったそれだけの理由であんなにも変わるものなのかと。
それでも、腑に落ちるのは何故だろう。まるで、エミリとリノにとっては当たり前のことのように感じた。