Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第15章 賢者
(…………死にたく、ない!!)
もう一度、宝石を瞳に映す。
シトリンは、泥に塗れながらも鈍い輝きを放っていた。
諦めなければ希望は必ずあると、エミリを導こうとしてくれているのだろうか。
エミリは、強く手を握り再び体に力を込める。すると、後ろから狼が動く気配を感じた。
エミリが動きを見せたことで、狼も警戒大勢に入ったのだろう。
唸りながら、一歩ずつエミリへ近づいていく。その気配を感じながらも、前を見つめてもがき続ける。
「……フーッ……フーッ…………」
狼の息遣いがエミリの鼓膜を震わせる度に、恐怖心が襲う。それでも泣きわめきたくなる気持ちを抑え、少しずつ前へ進む。
もうすぐ近くの木の根元へ辿り着く。そう思って、手を伸ばした時、
「いっ……!!」
足に何かが突き刺さる感覚を覚え、声を上げた。咄嗟に振り向けば足元へ近づいていた狼が、その鋭い爪をエミリの足へ何度も突き刺し、引っ掻き回していた。
「……うっ……い、た……!」
狼から与えられるダメージに、強く目を瞑り顔を歪める。
動きを止めたエミリに、狼は遠吠えのように一鳴きすると、エミリの背中へ乗っかる。
「っ!?」
このままでは顔に噛みつかれる。瞬時にそれを悟ったエミリは、握っていた操作装置を振り上げ、その短い刃で狼の体を突き刺した。
「グアーッ!! ウアアア!!」
エミリからの攻撃に、声を上げながらのたうち回る狼。
傷つけてしまった罪悪感に襲われながらも、生きるためだと思考を切り替えもう一度刃を振り上げた。しかし、狼に先手を打たれる。
「う、あっ……!!」
強く腕を噛みつかれた。
服に滲む生あたたかいそれは、自分の血。
さらに与えられた狼の容赦ない一撃に、エミリの額に汗が滲む。
けれど、死ぬわけにはいかない。そう自分に言い聞かせ、感情のままにエミリはガバリと状態を起こし、狼に刃を突き刺す。
(……ごめん、ごめんなさい……)
与えられる痛みに吠え続ける狼。自分はいま動物を殺そうとしているのだと、罪の意識に囚われながら刃を振りかざす手に力を込める。