Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第15章 賢者
エレン、アルミン、ミカサの三人がエミリのために作ったお守りのブレスレット。それについているシトリンが、キラリと輝いている。
その輝きに目を奪われるエミリの頭の中に浮かぶのは、ブレスレットと共に同封されていた手紙の文章だった。
”姉さん、必ず生きて帰ってきて。もう、家族を失いたくない……必ず、私たちの所に戻ってきて……”
(………………ミカサ)
”姉さんにはシトリンが似合うって言ったの、覚えてる? きっと、このシトリンが姉さんを支えてくれる。姉さん、姉さんが帰ってくるの……待ってるから。”
(…………アルミン)
”姉さん、絶対に死ぬなよ。”
(……エレン!)
エミリはカッと目を見開き、グッと手を握り込む。そして、全身に力を入れた。
(……死ねない!! 私は、まだ、死ぬわけにはいかない!!)
愛する弟たちの存在がエミリを奮い立たせた。
もう、エレンたちに悲しい思いをさせたくない。
残された者の悔しさややるせない気持ちは、もう何度も感じた。
カルラを失った時、そして、調査兵団に入ってから何度も……
(動け……!)
なかなか起き上がることのできない体に、必死に命令する。
(動け!!)
鞭を打つかのように、言葉で体を叩きつける。
激痛に耐えながら歯を食いしばり、懸命に鉛と化した体を持ち上げようともがく。
唇からは血が流れ、顎を伝ってポタリと地面に落ちていた。しかし、それすらもお構い無しにエミリは足掻き続ける。
「……んっ……うぐっ……」
顔が泥だらけになろうと、泥水を飲み込んでしまおうと、地面に爪痕を残し、生きるために懸命に起き上がろうと力を込める。
「……ぐぅ……うっ……!!」
そして、ようやく顔が上がった。
今度は、右手に操作装置を掴み短くなった刃を地面へ突き刺す。それを杖替わりに状態を起こし、1ミリ、1センチでも前へ進むため、地面を這いずった。
全身の体の痛みが、エミリの生気を奪い取ろうとするかのように激しく襲いかかる。それでも、這いつくばってでも、エミリは進み続けた。
───生きるために。