Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第15章 賢者
雨が強く降り続ける中、リヴァイ班率いる別働隊が拠点に到着した。
急な天候の変化により、被害はいつも以上に大きなものだった。荷台に横たわる兵士たちを担架で運び、手当をするために兵士たちが動き回っている。
「手当は他の奴らに任せておけ。お前らは周囲の警戒を怠るな」
「ハッ!」
状況を確認したリヴァイは、部下のエルドやグンタに指示を出し、エルヴィンが居るであろうテントに向かった。
「エルヴィン」
側近と今後の動きについて話をしていたエルヴィンに声をかける。それに反応したエルヴィンが、一度話を止めてリヴァイに向き直った。
「リヴァイか。状況は?」
「最悪だ。この悪天候のせいで、どの隊もほとんど機能してねぇ」
「……そうか」
エルヴィンは顎に手を添え考え込む。被害の大きさについては予想していた通り。あとは、天候が調査兵団の運命を左右する。
「エルヴィン、ハンジの隊が到着した」
そこへ、ミケがハンジ班の到着を報せに顔を出す。そんな彼の表情は、とても険しいものだった。
「随分と辛気臭ぇ顔してやがるな。向こうも状態はこっちと変わらねぇってことか」
「……それもあるが、それだけじゃない」
はっきりしないミケの返答に、リヴァイとエルヴィンは眉を顰める。問ただそうとリヴァイが口を開きかけた時、
「……失礼するよ」
よく聞き慣れた声が彼らの耳に入る。そちらへ目を向ければ、到着したばかりのハンジが顔を俯かせて立っていた。
いつもと明らかに様子が違う彼女の様子に、リヴァイとエルヴィンは目を見開く。
「……ハンジ、状況を説明してくれ」
一向に口を開く様子のない彼女に、エルヴィンが静かに促す。
「…………負傷者、死者共に多数。隊もほぼ壊滅状態だ。後で報告書を持ってこさせる」
「……そうか。わかった」
「ただ……一人だけ行方不明者が出た」
ハンジのその言葉にリヴァイは首を傾ける。それだけの被害が出たにも関わらず、行方不明者がたったの一人だけで済んだ。かなり運が良い方だ。