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Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人

第15章 賢者


咄嗟に振り向けば、ほんの少し霧が晴れたその奥に巨人に掴み上げられている一人の兵士が見えた。

その兵士は、今年調査兵団に入団した後輩だった。巨人に強く握られたのか、痛みのせいで顔が歪んでいる。
それを目にしたエミリは、考える前に方向転換をした。


「エミリ!? 待って!!」


二ファの静止の声も聞かず、リノを巨人の方へ走らせる。見てしまったのに見逃すなんて冷酷なことは、エミリには出来なかった。

剣を抜き、立体機動に移る大勢に入る。そのままタイミングを伺って、アンカーを発射した。
体が巨人の方へ引き寄せられ、雨に打たれながらもバランスを取りながら、兵士を握る巨人の腕を切りつける。


「……ぐっ!!」


しかし、一太刀だけでは切り落とすことができず、エミリは一度近くの大木へ着地する。


「……う、あぁ……ああああ!!」


悲鳴を上げながらもがき続ける兵士。巨人は不気味な笑みを浮かべ大口を開ける。


「……やめろ!!」


再び巨人へアンカーを刺し、飛び上がる。巨人の両目を素早く切りつけると、今度は巨人が悲鳴を上げた。それによって、兵士を掴む手の力が弱まった。その隙を見て兵士の腕を掴み、思い切り引っ張る。


「エミリ!! こっちだ!!」


その時、下からモブリットの声が聞こえた。彼を目の端で捉えたエミリは、そのまま兵士を巨人の手の中から引き抜き、モブリットに向けて投げ飛ばす。

ぐったりとしたまま落下していく兵士をしっかりと受け止め、モブリットは再びエミリへ顔を向ける。


「よし、早く戻れ!! このまま拠点まで逃げ切る!!」

「はい!」


この雨と霧の中、巨人との戦闘は難しいと判断したのだろう。相手をしていた巨人は、エミリに目を潰されたため再生するまで時間がかかる。この隙に距離を取るしかない。

エミリは駆け寄って来るリノを確認し、そこへ飛び乗ろうと再びアンカーを木へ刺そうとした。


「エミリ! 左!!」

「え……っ!?」


ドシンと、鈍い音と共に体に痛みが走った。

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