Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第15章 賢者
今回の壁外調査は、新たな経路の確保が目的となっている。これまでの遠征で確保した拠点と別の拠点とを結ぶ道を作るためだ。
そのためには、森を抜ける必要がある。しかし、そこが少々厄介だった。
崖が多いその森は、大人数で馬を走らせてしまうと非常に危険だ。何故なら、崩れやすいからだ。
また、道も狭いため森を抜けるには細心の注意が必要となる。
ただでさえそんな危険な道を通っているにも関わらず、空には淀んだ雲が覆い、大粒の雨を降らせてきた。
「……まさか、こんな場所で雨と遭遇するなんて……!」
エミリは、リノを走らせながらフードを被る。
視界は暗く霧がかかり、仲間の位置の把握さえ困難。ハンジの指示だって聞こえにくい。
また、雨のせいで全身がずぶ濡れとなり、ブーツにまで水が染み込んでいる。服が肌にまとわりつき気持ちが悪い。
そして、雨と濡れた服が体温を奪っていく。体が冷えるため、指の感覚も無くなってきた。
最悪の状態だ。
「後方より、巨人二体接近!!」
ザアザアと強い雨音が響く中、微かに聞こえた兵士の声に緊張が走る。
耳をすませてみると、ドスンドスンと巨人が迫って来る音が確かに聞こえた。
「……っ………………だ……!!」
誰かが指示を出しているようだが、強い雨のせいで全く聞き取れない。
とにかく、仲間とはぐれないように進むことが何よりも大切だ。だが、後ろからは巨人が迫っている。足音と共に時たま聞こえる叫び声は、仲間が襲われた悲鳴だろう。
「……エミリ!!」
「っ!?」
隣から掛けられた声に、ハッとして振り向くとそこには剣を握った二ファが馬を走らせていた。
「二ファさん……!」
「良かった……無事だったんだね」
エミリに怪我がないことを確認したニファは、ホッと安堵の表情を浮かべる。
「あの、他の人たちは?」
「それが……」
ニファが状況を報せようと口を開いた時、「っうあああああ!! たすけ、て……くれぇ!!」と大きな悲鳴が聞こえた。