Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第15章 賢者
「あはは、その話懐かしいね!」
「ニファ、笑いごとじゃないぞ……皆の前でゴーグルさんって呼ばれるの、結構恥ずかしかったんだからな」
「え、そうだったんですか?」
「お前なあ……」
キョトン顔のエミリだが、当時は割と本気でそう呼んでも良いのだと思い込んでいたため、今まであまり気にしていなかった。
「はあ……ま、今更呼び方変えろなんて言わねぇよ」
「お、優しいな。ゴーグル!」
「原因はお前だろ……」
ガシリと肩を組んでくるケイジに、ゴーグル(あだ名)は半目で軽く睨みつける。そんな二人のやり取りに、二ファはクスリと笑いを零した。
「じゃあ私もゴーグルって呼ぶことにする!」
「二ファまで悪ノリしなくていい!」
そんな先輩たちのやり取りに、今度はエミリが腹を抱えて笑い声を上げる。
「あははは!!」
「エミリ、笑うな……」
面白そうに笑う彼女の頭をゴーグルがわしゃわしゃと撫でてやれば、エミリは嬉しそうに微笑む。そんな部下たちに声を張り上げる者が一人。
「お前たち! 喋ってないで準備をしろ!!」
「「「「ハッ! モブリットさん!!」」」」
結局、副分隊長に怒鳴られた四人は、すぐさま話を止めてピシリと敬礼をした。
「モブリットってば、別にそんなに怒らなくてもいいじゃない。調査前なんだから、むしろこれくらい余裕なくちゃ」
後ろからそれを見ていたハンジが、「怒ってばっかりだと禿げるよ〜」と言いながらやれやれと肩をすくませる。
「分隊長! アンタが呑気すぎるんですよ!! もっと分隊長として最低限のですね」
「はいはい、わかってるって。モブリットってばホントに口煩いんだから〜」
モブリットの小言を右から左へ受け流すハンジ。どっちが分隊長なのだろうといつも思ってしまう。
いつもより心が軽くなったのを感じながら、エミリはリノに跨った。
「リノ、今日もよろしくね」
撫でながら声をかければ、「ブルル……」と返事をしてくれる。
「さて、サクッと行って帰って来ようか!!」
部下に向かって笑顔で言うハンジの言葉に、モブリットはまたもや頭を抱えていた。