Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第15章 賢者
「よく見れば、腕にも何かつけてるな」
エミリの右手首にキラリと光る石を見つけたケイジが疑問を口にする。それに気がついてくれたことが嬉しかったのか、エミリはにっこりと微笑んだ。
「あ、それってもしかして、弟さんたちがエミリにプレゼントしたブレスレット?」
「はい!」
今日まで大切に仕舞っていた。初めてつけるのは、この壁外調査の時だと決めていたから。
早く付けたくて仕方なかったが、なんとなく今日でなければ嫌だったからだ。
「これは私の一番のお守りですから!」
大好きな弟たちが、エミリのために作ってくれた宝物。大切だからこそ、肌身離さず持っておきたい。
「失くさねぇように気をつけろよ」
「当たり前です! それに、失くすなんて考えられませんから!!」
鈴もブレスレットも失くすわけにはいかない。だからこそ、置いておいた方がいいのかもしれない。それでも、やっぱり持っておきたいと思うから。
「ほら、お前ら喋ってないで準備しろ!」
三人で駄弁っていると、ゴーグルがトレードマークの兵士が声をかけてくる。
お喋りし過ぎだと察した三人は、慌てて彼の方へ向いた。
「すみません、ゴーグルさん」
「なあ、エミリ。その『ゴーグルさん』って呼び方、いい加減どうにかならないか?」
「もうそれで定着してしまったので無理ですね」
微妙な表情を浮かべる彼に、エミリがニッコリと微笑んで返せば、彼はガックリと肩を落とす。
「はあ……ケイジ、お前がエミリに余計なこと吹き込むからこうなったんだぞ」
「悪いって」
そう言ってジトリとケイジを睨むが、ケイジは面白そうに笑っているだけ。悪びれた様子はない。
エミリが新兵としてハンジ班の所属が決まったその日、ハンジの提案によりハンジ班のメンバーで歓迎会が開かれた。
その自己紹介で、「こいつはゴーグルがトレードマークなんだ。だから、”ゴーグルさん”って呼んでやってくれ!!」とケイジが冗談でエミリに言ったのが切っ掛けだった。