Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第15章 賢者
装備を終えたエミリは、仕上げに髪を後ろでまとめ、自由の翼を背負った。
そんな彼女の胸元には、先日見つけたフクロウの形の鈴と笛がぶら下がっている。
「エミリ、それ付けていくの?」
「うん……大切なものでね」
もしかしたら、という淡い期待を抱いて、そこに祈りを込めるように、エミリはぎゅっと鈴を握る。
馬小屋から愛馬を引き連れ、ペトラと手を取り合いお互いの無事を祈った後、それぞれ自分の隊へ向かう。
「やあ、エミリ! よく眠れた?」
「ハンジさん、おはようございます。はい! ばっちり睡眠とってきました!!」
敬礼すれば、「元気があってよろしい」と頭を撫でられる。
「分隊長、お願いですから……壁外で暴走しないでくださいね」
相変わらずなハンジに、モブリットは既に冷や汗をかきながらハンジに訴える。しかし、本人は「うん、まあ……がんばるよ〜」と呑気に流していた。
「あはは、ハンジさんってば相変わらずだね……」
「まあ、もう今更ですけどねぇ」
隣に立つのは班員であり、先輩の二ファ。今日もいつもと同じように、暴走するハンジの姿を一緒に想像して苦笑を漏らす。
「ところで、エミリの胸元にぶら下げてるそれは何?」
「あ、鈴と笛です!」
いつもは付けていない鈴と笛が気になった二ファが、まじまじとそれを見る。エミリはそれを手で持ち上げて見せた。
「これって……フクロウだよね? 珍しい鈴だね」
「父さんが、私の誕生日にくれたものなんです。わざわざ注文して作ってくれて」
「そうだったんだ」
「そんな大切なもん、壁外調査に持って行って大丈夫なのか?」
そこへ、後ろからひょっこりと顔を出して声をかけてきたのは、同じく班員であり先輩のケイジ。
「うーん……でも、もしかしたら、いつか役に立つ時が来るかもなあ、と思ったので」
「どういうことだ? それ……」
笛はともかくとして、鈴は一体何に使われるのだろう。エミリの考えていることがよくわからなくて、ケイジは首を傾げた。