Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第15章 賢者
『トパーズを持ってはいないけど、まるでアルミンの中に、トパーズが存在しているみたい。そんなアルミンが、実際にトパーズを持ったら……もっとすごい人になったりして』
本を見ながら楽しそうにお喋りをするエミリと同じように、アルミンも本を覗き込む。
『やっぱり、姉さんはシトリンが似合うね』
エミリがアルミンに言ったように、エミリの中に既にシトリンが存在しているかのようだ。
『ふふ、ありがとう!』
満面の笑みを浮かべるエミリに、アルミンは思った。
(ほら、その笑顔が既に太陽みたいであったかい)
笑顔も、言葉も、彼女が持つものはとても温かくて、いつも背中を押してくれる。
『じゃあ、姉さんもシトリンを実際に身につけたら、もっと素敵な人になるね! いつか、プレゼントするよ!』
『うん! なら、私もいつかアルミンにトパーズをプレゼントするね!』
そして、それが二人の小さな約束となった。
「──だから、きっとシトリンを選んだのはアルミンかな」
「そっか……」
光に反射してキラリと光るシトリンを愛おしげに見つめる。そして、エミリは再び封筒から手紙を取り出した。
広げて見てみると、少し形の歪んだ弟のエレンの字が目に入る。それを目で追って読んでいくと、次は綺麗な達筆の字に変わった。これはミカサの字だ。そして、男の子にしては綺麗で可愛らしい、アルミンの字。
いつもはバラバラで送ってくる手紙は、このブレスレットをプレゼントするために一つになって送られた。
三人で作った手作りのブレスレット。
それを身につけて、壁外で戦ってほしい。無事に帰って来ますようにと祈りを込めたから、と。
「素敵な弟さん、妹さんを持ってるね、エミリ」
隣で一緒に手紙を読んでいたペトラが、エミリにハンカチを差し出す。
「……うん!」
ハンカチを受け取ったエミリは、そっとそれで嬉し涙を拭った。