Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第15章 賢者
「エミリ、宝石に詳しいね」
スラスラとエミリの口から出てくる解説に、ペトラは感心したように目を丸くする。
エミリは恥ずかしげに頬を染めながら「えへへ……」と笑った。
「実は、小さい頃から大好きだった魔法の物語にね、たくさん宝石が出てきて。それで、当時はよく宝石の本を読み漁ってたんだ」
同じく本好きなアルミンと一緒に、二人で本を広げて宝石の話をしていた懐かしい記憶が蘇る。
「でも、どうしてシトリンなの?」
「私の誕生日が11月だからだよ。11月の誕生石って、トパーズだけじゃなくてシトリンもなんだよね」
「なるほどね」
11月28日がエミリの誕生日。だから、誕生石のシトリンがつけられている。
「あれ、じゃあどうしてトパーズじゃなかったの?」
「実は小さい頃、私にはトパーズよりもシトリンが似合うって言われてね」
それは、アルミンと二人で本を読んでいた時、ふいに彼がエミリに言ったことだ。
『姉さんって、シトリンみたいだよね……』
絵の具で描かれている二つの宝石の絵をじっと見つめながら、アルミンは小さな声で呟くように言った。
『え、どうして?』
『だって、姉さんはいつも夢に向かって頑張っていて、自分の意思もしっかり持ってて、努力家だし、いつも僕のこと元気づけてくれるし……』
本に視線を落としたまま、アルミンはエミリの良いところをどんどん述べていく。勿論、いきなり褒め言葉を連発されたエミリの頬は、みるみる赤くなっていった。
『待って待って! なんか、そう言われると逆に恥ずかしいんだけど……』
『本当のことを言っただけだよ。本当に、姉さんって太陽みたいにあったかいし』
『そ、そうかな……ありがとう』
そう言って顔を真っ赤にして微笑むエミリを一瞥し、アルミンは空から世界を照らす太陽を見上げた。