Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第15章 賢者
「エミリ、掃除の進み具合はどう?」
エミリが一人で思い出に浸っていると、ペトラが布団を持って戻って来た。
「え、ああ……今は自分のクローゼット片付けてたところ!」
「そっか! それにしても、すごい数のぬいぐるみね……」
エミリの周りにちょこんと座っているぬいぐるみたちを見ながら、ペトラは呆れたように言う。
「いや〜、ついつい可愛くて衝動買いしちゃうんだよね」
「ふふ、分からないこともないけどね。いつか自室ができた時に、たくさんぬいぐるみ飾ったら?」
「あ、それいいね! そうする〜」
役職の位が分隊長にまで上がると自室が貰える。班長クラスや長年生き残ってきた精鋭班の兵士たちは、一部屋を二人で使用することが可能になる。
「でも、個室もいいけど、ペトラと相部屋になれたらいいね!」
「うん。そっちの方が楽しそう!」
一人より二人、誰かが一緒に居てくれた方がお喋りもできて楽しいだろう。
「あ、そうそう、エミリにまた手紙が届いてたよ」
「本当!?」
はい、と差し出された白い封筒を受け取り宛先を確認する。そこにはいつも通り、愛しい弟たちの名前が記されていた。
「エレンたちからだ〜! なんか今日の封筒は少し分厚いなあ、なんだろう〜」
ルンルン気分で封を開け、中から手紙を取り出そうと指を差し込むと、ポロリと何かが膝の上に落ちた。
「エミリ、何か落ちたよ?」
「これ何だろう?」
手に取ってまじまじとそれを見る。
オレンジと黄色の糸で編まれたそれは、どうやらブレスレットのようだ。そこには、透き通った黄色の美しい石がつけられており、キラキラと美しく輝いている。