Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第15章 賢者
三日後に壁外調査を控え、兵士たちが纏う空気は日に日に重たいものへ変わっていく中、エミリはペトラや相部屋の同期たちと部屋の掃除をしていた。
訓練ばかりしていても疲労が蓄積されるばかりで、それなら掃除でもしてこの淀んだ空気を取り払おうというエミリの案で、こうして窓を全開にして箒と雑巾を手に部屋を綺麗にしていた。
「はあ……疲れた〜」
箒を持ったまま布団が敷かれていない状態のベッドへ腰掛けうーんと伸びをする。布団はペトラたちが洗濯したため、お日様の下で風に靡かれているところだろう。
「コラ、エミリ! アンタが言い出しっぺなんだから、休んでないで手を動かしなさいよー!!」
「ちょっとくらい休憩させてくれたっていいじゃない」
同期の文句に「はいはい」と気の緩い返事をしながら腰を上げる。しかし、もうハタキも終え床は全て掃いてしまったため、後は雑巾組が雑巾がけをする番だ。
「う〜ん……棚の整理でもしようかな」
いつの間にかぐちゃぐちゃになった本棚。引き出しの中もゴチャゴチャになっているため、前から整理したいと思っていた。いい機会だと、エミリは箒と塵取を直して本棚から手をかける。
(これが終わったら、私物の整理もしちゃおう!)
最近、薬学の勉強ばかりで自分の荷物の整理すらできていなかった。
大部屋には、一人一つずつクローゼットが用意されている。そこには本やら服やらが詰め込まれ、調査兵団に入ってから私物もかなり増えた。
訓練兵の頃からやり取りしていたエレンたちとの手紙も、最近のものまで全部手元に残っている。手紙を入れている箱もそろそろ溢れそうだ。また新しい箱を用意しなければならない。
「さてと……」
本棚や引き出しの整理を終え、自分のクローゼットを開く。
「うわ〜……」
いざ掃除しようと思ってクローゼットを開けてみると、かなりゴチャゴチャしていて正直どこから手をつければ良いのかわからない。
「う〜ん……収納家具かなんか増やした方がいいかも……」
とりあえず全部出して綺麗に収納しよう。そう思って、まずは服から手をつけた。