Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第15章 賢者
生きた環境が悪かったせいか、同年代に気の合う友達もできず、本人もよく友達なんかいなくても平気だ! と喚き散らしていたことを思い出す。
地下街ではリヴァイとファーラン、他の仲間たちと共に居る意外は、家の外でよく喧嘩もして帰って来ていた。
調査兵団に入ってからも犯罪者という冷たい視線で見られ、そこでもイザベルに友達ができることは無かったし、元々その頃は仕事が目的で入団していたため、周りとの馴れ合いは避けていたというのもある。
「……昔の俺の仲間に、お前と少し似たようなやつがいた」
「……兵長のお仲間さん?」
「ああ。強気で男勝りな性格が目立っていたせいか、いつもやかましかったが……妹みたいなやつだった」
「そうなんですね……」
リヴァイの話し方が過去形であることに気づいていたエミリは、ただ彼の話に相槌を打っていた。
「友人ができなかったあいつでも、お前となら……馬が合っただろうと思ってな」
「私もその人に会ってみたかったです……!」
本当に会わせてやりたかった。自分が好きになった女をイザベルにも。そして、彼女だけでなくファーランにも。
(多分あいつらは、好きな女ができたという俺を面白がってうるせぇんだろうが……それでも、喜んでくれるんだろうな)
リヴァイの頭の中に、二人の笑顔が浮かぶ。きっと生きていたら、そんな風に笑って祝福してくれるのだろう。
にゃーお
みゃあ〜
猫の親子がエミリとリヴァイをじっと見つめている。もう一度だけ鳴き声を上げた後、親子は猫独特の素早さで二人の前から走り去っていった。
もうその場にいなくなった猫の親子に、エミリは優しく微笑んで手を振っている。
エミリのことだ、あの親子がこれからも幸せに生きられることを願っているのだろう。
イザベルもよく、捨てられた犬や猫を見かけたら放っておけないやつだった。初めて出会った時だって、地下街に迷い込んできた小鳥を逃がすために追われていた。
そういう優しい所もよく似ている。ふっと微笑んだリヴァイは、エミリの頭に手を置いて立ち上がる。
「お前もそろそろ部屋戻って着替えろ。もうすぐ朝飯だろう」
「は〜い!!」
そのまま兵舎へと歩いて行くリヴァイの後をエミリは小走りで追いかけ、彼の隣に並んで歩いた。