Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第15章 賢者
「ったく、何でお前は学習しねぇ。立体機動装置を使うなり、梯子を使うなりすりゃあ良いだろうが。あと人を呼べ。俺が来なかったらどうなってたか分かってんのか」
リヴァイは、いつもより数倍鋭い目と低い声で早口で捲し立てる。
エミリは、リヴァイに抱きかかえられたままずっと口を尖らせ、彼の小言を右から左へ受け流していた。
「おい、エミリ聞いてんのか」
「…………なんか……兵長、過保護な親みたいですね」
「あ?」
完全にイジケモードに入ったエミリの不満に、リヴァイはピクリと眉を動かす。しかも、”過保護な親”とまで言われる始末。エミリのことを心配してこうして注意をしてやっているというのに。
「まさか、兵長っていつもこんなに口うるさいんですか?」
「あのな、俺はお前のために言ってやってるんだが」
「……それは分かってまひゃっ!?」
突然可笑しな声を上げて体をビクリと震わせたエミリにつられてリヴァイも肩を揺らす。
何もしていないのに何だいきなり、と思ってエミリの顔を見下ろしていたリヴァイは、ふと彼女の胸元が目に入り固まった。
「へ!? あ、ちょっ……!! 猫ちゃん…そん、なとこ…はいらない、でよお……!!」
抱き抱えていた子猫が、エミリのTシャツの胸元に顔を突っ込んでイタズラをしていた。さっきの可笑しな声は、ふわふわの毛が擽ったくて出たものだったらしい。
必死に子猫を服の中から取り出そうとしているエミリは、焦りと羞恥で顔が耳まで真っ赤になっていた。
体を捩り、猫の体を掴むも今度は爪が下着に引っかかって出てきてくれない。
「あ〜〜もう! 出てきてよお!!」
どんどん涙目になっていくエミリの表情に、リヴァイも翻弄されていく。
猫と奮闘しているエミリには申し訳ないが、その顔は誘惑されているようにも見え、リヴァイはリヴァイで自分の中の獣と必死に戦っていた。
しかもこの状況は結構まずい。鍛錬中だったエミリの服装はTシャツと短パン。そんな格好のエミリを横抱きしているリヴァイの片手には、彼女の真っ白で柔らかい太腿に直接触れている状態だ。
頭を抱えたくてもできない、目元を隠すこともできない。リヴァイは溜息を吐くしかなかった。