Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第15章 賢者
「ちょ、ちょっと待って下さい!!」
「そうか、わかった。なら、三秒以内に降りてこい」
「全然わかってないじゃないですか!!」
「いくぞ、いち……」
みゃあー
「……は?」
エミリの声も聞き流しリヴァイが数えようとした時、どこからか猫の声が聞こえ一旦カウントを止めた。
「あ〜〜も、もうちょっとだけ待ってね!」
慌てるエミリの言葉は、明らかに彼女の腕の中に向けられていた。まさかと辿り着く考えは一つ。
みゃーみゃっ
(やはり、猫を助けに木に登っていたのか……)
上から聞こえる鳴き声に確信を得たリヴァイは、やれやれと溜息を吐く。どうせ降りられ無かった猫を放っておけなくて、助けようとしていたのだろう。
実にエミリらしい。
「兵長! 私、猫を助けてるんですよ!!」
「んなもん、わざわざ説明しなくても鳴き声聞きゃわかる」
「と、とにかく今から降りまっ……ぎゃあ!?」
「ッッ!?」
手が滑ってバランスを崩したエミリが、猫を抱えたまま落下してくる。
「チッ、馬鹿が!」
急なことで驚きながらも事態を想定していたリヴァイは、両腕を上げて情けない声を出して落ちてくるエミリを受け止めた。
「うぅ…………あれ?」
「あれ、じゃねぇ。だから言っただろうが」
恐る恐る目を開けてポカンと口を開けるエミリをリヴァイが睨みつける。
そんな自分の上官を見て受け止めてくれたのだとようやく理解したエミリは、猫を抱き直し目をそらした。
「す、すみません……」
「お前はただでさえ危なっかしいんだ。ちゃんと注意しろ」
「危なっかしいって、別に普段からそういうわけでは……」
「今木から落ちただろうが」
「それは……兵長が話聞いてくれないから……」
「あ?」
「……何でもありません」
口を尖らせ反論を続けるエミリをさらに睨みつけると、ビクリと肩を揺らしようやく降参した。