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Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人

第14章 傷跡




「私、小さい頃に読んだその本が忘れられないんです。とっても素敵な物語なんですよ」


魔法使い見習いの主人公・ミリアが織り成す、愛と希望に溢れたファンタジー小説。
カルラも幼い頃から愛読していたもので、その本は母を通してエミリに行き渡った。

エミリは、小さい頃から読書が好きだった。
読めば読むほど、自分の知らないことを本は教えてくれるから。世界が広がっていくようで、とても楽しくて仕方がなかった。
アルミンとも本を広げてよくお喋りをしていた。懐かしい思い出だ。


「主人公のミリアちゃんは、いつも明るくて元気な女の子で、どんな時でも自分の信じる愛のカタチを貫く真っ直ぐな心を持った強い子なんです!」


いつか、自分もこんな風になりたい。
どんな困難な状況でも、決して倒れない強い心を持った人間になりたい。誰にでも愛情を注げるような優しい人間になりたい。
ミリアは、憧れの存在となった。


「……なるほどな。お前のその無茶する馬鹿なところは、その本と主人公の影響だったわけか」

「馬鹿って、酷くないですか……?」


相変わらず辛辣なリヴァイの言葉にエミリは口を尖らせる。
最近、リヴァイから馬鹿と呼ばれることが多くなってきた気がするが、これは貶されているのだろうか、それとも褒められているのだろうか。


「いつか兵長にも読んでほしいです! 本当にすごく良いお話なんですから!!」

「……いつか、な」


エミリという人間を作り出したその本は、実に興味深い。

人間の想像によって作り出された物語など、所詮は絵空事でしかない。非現実的なものばかりだ。
暗い地下街で生きてきたリヴァイにとって、そんな夢物語は胸糞が悪いだけのもの。それは勿論、今も変わらない。

だけど、エミリはいつもリヴァイを明るい世界へ誘う。連れられた場所はとても温かくて心地良い。

彼女が手を引いてくれるのなら、一度その夢物語に浸ってみるのも悪くないと、そう思えた。

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