Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第14章 傷跡
「兵長、誕生花ってご存知ですか?」
「誕生花? いや、知らねぇな。誕生石と似たようなもんか?」
「誕生石は知ってるのに、誕生花の存在は知らなかったんですね……」
「今まで花に興味なんて無かったからな」
無表情で淡々と述べるリヴァイにクスリと微笑む。花に興味が無かった彼が、こうして花のプレゼントをしてくれたのだと思うと余計に嬉しくなった。
「ガザニアの誕生花は、1月28日なんです」
「……まさか、お前の誕生日か?」
「違いますよ」
「じゃあ誰だ?」
リヴァイが問えば、エミリはニコリと嬉しそうに微笑む。
それを目にしたリヴァイは、一つの考えに辿り着いた。
もし、その1月28日が彼女の元想い人たちの誕生日だったとしたら……
わざわざ向日葵からガザニアに変えた企みが水の泡となる。
一体、誰の誕生日なのだろう……
リヴァイは固唾を呑んでエミリの返答を待つ。
「ふふ、1月28日はですね……なんと、私が好きな本の主人公の誕生日なんですよ!!」
「………………は?」
まさか架空の人物を指しているとは思わず、リヴァイは固まったままその一文字を発した。
「ミリアちゃんって言うんです! あ、主人公って女の子なんですよ〜」
「まさか、ガザニアが好きな理由ってのは、それだけか?」
「え、そうですけど?」
キョトンとした表情で答えるエミリに、安堵と呆れが混じった溜息を吐く。
元想い人たちでは無かったことに安心したが、何故その『ミリア』という架空の人物の誕生日にこんなにも幸せそうな顔をしているのか、やはり彼女の考えは理解不能だ。どこからつっこめばいいのか分からないほどに。
「あ、兵長ってば私のこと馬鹿にしてますね!」
「当然だ。家族や友人なら分かるが、何で好きな本の主人公なんだ」
「ミリアちゃんは私の憧れなんですよ!」
「益々意味が分からねぇよ……」
流石にエミリの頭の中が心配になってきた。本当にコイツは大丈夫だろうか。一度病院で検査を受けた方が良いのではないだろうか。
リヴァイは頭を抱えた。