Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第14章 傷跡
リヴァイが目を覚ますと、窓から光が差し込み部屋を明るく照らしていた。
眩しさに瞼を閉じ、数回瞬きをして目を慣らす。
(……もう朝か……)
外からはチュンチュンと鳥の鳴き声が聞こえる。
いつもと比べて目覚めが良い。
きっと腕の中でまだスヤスヤと眠っているエミリが居るからだろう。
頭を優しく撫でてやれば、エミリは眠ったままリヴァイの胸元へ擦り寄ってくる。
そんな彼女が可愛くて額にそっとキスを落とした。
もう少しこのままで居たい。
できれば、エミリが目を覚ますまでこうやって抱き締めて居たいが、リヴァイにはこれから行きたい所があった。
仕方無くエミリの腕を解き、静かにベッドから出て布団を掛けてやる。
「……もう少し眠っているといい」
枕に顔を埋めて幸せそうに眠るエミリの頬に手を添える。
昨日、あれだけ泣いたのだからゆっくりと寝かせてやりたい。
暫く彼女の顔を眺めてから、リヴァイは音を立てぬようそっと部屋を出た。
「ようやく認めたらしいな」
静かに扉を閉めた所で掛けられた声に、リヴァイは眉間に皺を寄せる。
「……エルヴィン」
「だが、まさかこんな朝早くにエミリの部屋からお前が現れるところを目撃するなど、思っていなかったが」
「嘘つけ……わかってやがったクセに何言ってる」
知らばっくれるエルヴィンに少し苛立ちを感じながら、リヴァイは自分の宿泊部屋の扉に手をかける。
「エルヴィン、馬車の時間を遅らせたい」
「理由は?」
「……用事ができた」
「フッ……エミリか」
「だったら何だ」
相変わらず勘の良いエルヴィンに誤魔化しは効かない。
今に始まったことでは無いが、たまにやりづらさを感じる。
「この後の予定だが、王都へ急用ができてな。朝食を済ませた後、ナイルと行ってくる」
「……了解だ」
「だから、馬車の時間はお前の好きにするといい」
エルヴィンが一番言いたかったのはそれだろう。リヴァイの恋愛事情が彼の楽しみでもあるようだ。完全に面白がっている。
エルヴィンはリヴァイの肩をポンと叩くと、彼も自分の宿泊部屋へ入って行った。