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Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人

第14章 傷跡




『リヴァイ、お前って好きな女とかできたことないのか?』


地下街に居た頃、仲間であるファーランが興味本位で聞いた言葉を思い出した。
確か、これはまだ彼と出会って間もない頃だったか。


『……何だ、急に』

『いや、何となく気になっただけさ。リヴァイはそういうの興味無さそうだけど、実際はどうなのかなって思ってさ』

『はっ、くだらねぇ……』


好きな女なんて、一生できるはずないと思っていた。それは、子供の頃からずっと思っていたことだ。
地下街にも恋人というものが仲睦まじく歩いていたが、興味も無かったし、女など面倒な生き物だと思っていた。

そして、もう一つ。
恋や愛などという幻想にも似た不確かなものを信じなかった決定的な理由、それは母親のことがあったから。

リヴァイの母、クシェルは娼館で働いていた。
地下街で生きていけない女は大抵がそこで売り物として扱われる。母もそうだった。

そこで、客としてやって来た男性との間にリヴァイが生まれた。
勿論、血の繋がった父親なんて知らない。クシェルも父について話そうとはしなかった。

でも、聞かなくても分かる。
クシェルは、暗く冷たい地下街の中、一人で自分の身に宿ったリヴァイを守り、産んで、命が尽きるまで育ててくれた。
だが、父親にあたる男はそんな彼女を放っておくような奴だった。

それが、現実。
所詮、恋や愛が美談になるのはお伽噺の中だけだと。


ずっと、そう思っていた。
エミリと出会うまでは……


今でもはっきりと頭に残っている、好きなヒトの幸せを願って身を引いた彼女の姿が。


エミリは教えてくれた。

”好き”という感情は、ヒトを幸せにするものだと。
”恋”とは、ヒトを大切に思うことができるものだと。
”愛”とは、悲しみを超える力を持っているものだと。


全て綺麗事だと思っていた。
そんなリヴァイの考えを彼女は覆した。

冷たい世界に温もりをくれた。
そして、その温かさで何度もリヴァイを救ってくれた。

そんなエミリが……

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