Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第14章 傷跡
どれくらい泣いていただろう。時計を見ていないからわからない。
リヴァイに包まれて涙を流していたエミリは、今は泣き疲れて眠っている。
リヴァイの背中に手を回したまま、ギュッと離さないように服を握り締め、安心したようにぐっすりと寝息を立てていた。
リヴァイはそんなエミリを引き剥がそうとは思わなかった。逆に、離れてしまえば彼女が悪夢を見てうなされるのではないかと心配だった。
というのは口実で、ただそばに居たいだけ。このままエミリを自分の腕の中に収めて置きたいという、ちょっとした下心もあった。
(……結局、じいさんの言った通りってわけか)
リヴァイがエミリに抱いていた感情。
それは、ピクシスが指摘した通り”恋”だった。
エミリの話を聞いている間、何度も抱き締めたくなった。
背を向けて強がる彼女の涙を拭ってやりたくなった。
そして、もう一度あの笑顔が見たいと思った。
笑っていても、泣いていても、どんな時でもそばに居たい。居てほしい。
彼女の話を聞いている間、彼女に声を掛けている時、時間が流れていくうちに気持ちはどんどん大きく膨れ上がって、気づけば『これが恋なのか』と受け入れている自分がいた。
いつから、エミリにこんな感情を抱いていたのだろうか。
……いや、もうそんな事はどうだっていい。
そっとエミリの頬に手を添える。彼女は変わらず目を瞑って眠っているだけ。
そんな顔も愛しくて仕方が無い。
これが……恋。
愛しいと思う感情。
リヴァイにとって、エミリが初恋の相手となった今、初めて感じる擽ったい気持ちに戸惑うと同時に、それを悪くないと思う自分がいることに気づいた。