Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第14章 傷跡
「……う、うぅっ……」
エミリの両目からは、とめどなく涙が流れ出ている。
リヴァイの言葉に救われた。
あの時、エミリが欲しかった言葉を彼はくれた。
フィデリオやいつも一緒にいる友達が励ましてくれたが、実はその中に、陰でエミリを悪く言っていた子もいた。
本当にひとりぼっちになったようだった。
エミリが泣いているといつも抱き締めて『笑って』と言ってくれたカルラも、壁が破壊された後に起こった出来事だったから、会うこともできなかった。
ただひっそりと、皆が寝静まった兵舎のベッドで、声を押し殺して泣くことしかできなかった。
「エミリ、今のお前はひとりじゃねぇ。フィデリオだけじゃなく、ペトラやオルオも居るだろう。お前を大切に思うハンジたち、調査兵団の仲間も居る。そして──」
それだけじゃない。
頑固で意地っ張りなところもあるが、少し女らしさに欠けるお転婆で、誰かのために無茶ばかりする、とっても優しい女の子。
そんなエミリが、いま、完全にリヴァイの中で一番特別な存在に変わった。
「俺も居る。だから、お前を傷つけたやつらのために、お前が涙を流し続ける必要はねぇ」
そう言って、布団にくるまったままのエミリの身体を強く抱き締めた。
「……うぅ……へーちょお……!!」
とうとうエミリは、声を上げて泣き出した。
リヴァイの肩に顔を埋め、布団から出した手を彼の背中に回して、体を震わせながら泣いた。
「わ、たし……ほんとはっすごく辛かったんれす……!!」
「ああ」
「みん、なが怖くて……だれを頼っていい、のか……わ、からなくて……! ほんね、を言うことも……でき、なぐで……」
「ああ。よく耐えたな」
リヴァイが優しく頭を撫でてくれる。
その温もりが安心をくれた。涙が止まる気配なんて無かった。
多分、私はきっと……ずっと、こうして欲しかったんだ。
誰かに抱き締めてほしかった。
そうして、もういいよと言ってほしかった。
自分を許すことを……誰かに許してほしかった。
その後、エミリはリヴァイの腕の中で、気の済むまで泣き続けた。