Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第14章 傷跡
「いいか、人間ってのは……必ず人を傷つける生き物だ。それも、一度や二度だけじゃねぇ……死ぬまで何十回、何百回とな」
性格や考え方が人それぞれだから、されて良いことも悪いことも皆違う。
自分の何気ない言動が、時に人を傷つけることもある。そして、その反応もまたそれぞれ。
怒る者もいれば、我慢する者だっている。だから、その人にとって悪い事だと気づかない人だっている。
そうなれば、人はまた傷つけるという行為を繰り返してしまう。
「誰も傷つけずに一生を終えるような聖人なんてどこにも居やしねぇよ」
誰かを傷つけたことなんかない。もし、そう思っている人がいたら、それはその人の驕りだ。
「善良な人間ってのは、自分の間違いを悔い改められるやつだと……俺は思っている」
自分が犯した過ちを素直に受け入れ、反省し、少しでも改善しようと心掛ける者、それこそが何よりも大切で、人として持つべき心。
「そして、俺から見たお前は……善良な人間だ」
その事故からもう三年近く経っているはずだ。それでもまだ、負い目を感じている。
どんなに酷い仕打ちをされても、言葉という刃で傷つけられても、エミリはずっと頭を下げ続けていた。
逃げることもしなかった。
その行動は、彼女の素直で綺麗な心を表している証拠だ。
「お前は、醜くなんかねぇ。当たり前のことを思っただけだ。そんな事でまで一々自分を卑下しなくていい」
誰だって、傷つけられたらその対象をどうしても嫌ってしまう。そうなってしまったら、愚痴だって零してしまうだろう。
でも、それが人間。
生きている上で人間が必ず持つ当たり前の感情なのだ。
「大体、お前が醜いやつなんだったら、お前を傷つけたやつらの方がもっと酷ぇやつになるな」
いくら大切な友達が傷つけられたからといって、無闇やたらとエミリに放った言葉も十分酷い。
エミリの気持ちも考えず、ただ憎い相手を傷つけ続ける。
簡単に”死ね”なんて言葉を使うやつだって、それは命の大切さを解っていないことと同じ。
そんな奴らの方が、よっぽど醜く最低な人間だ。