Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第14章 傷跡
結局その話し合いは、今更何を言っても仕方が無いだろうと教官が言いくるめ、一旦終わった。
しかし、ガウナは懲りずにまだ攻撃を続けてきた。
わざと近くでエミリに聞こえるように、悪口を言ってくるのだ。
『死んでほしい』
『視界に入ってこないでほしい』
『どうせ友達なんか居ないくせに』
しかも、正面から言いに来ているわけでもないのに、ちゃんと陰口じゃない、私は凄いと言い張るガウナが嫌いで仕方が無かった。
エミリは、回りくどいやり方が一番大嫌いなタイプだ。
彼女が正にそれだった。
「……もう、すごく面倒でした……」
ストレスが溜まり、精神的に追い詰められる一方だった。
何度も訓練を休みたいと思った。でも、休めばそれこそ相手の思う壺だ。
それだけは絶対にしたくなかったから、意地でも訓練に参加した。
嫌なことは鍛錬に没頭して忘れた。
ずっと鍛錬を続けて自分を追い込めば追い込むほど、嫌なことを忘れられて、正直楽だった。
それで何度、フィデリオや友達に止められただろうか。
「……苦しい思いをすれば、それで頭がいっぱいになって、言われたこともされたこも全部、忘れられて……すごく、気持ちが良かったんです……」
それほどまでに、精神的に追い詰められて自暴自棄になっていた。
でも、そんな中、中立を名乗っていた三人中二人がエミリの元へ謝りに来た。
『中立なんて言っていたけど、でも……きっとガウナの方についていたと思う。ごめんなさい』
それだけで、エミリは救われた。
そう思ってくれただけで、十分だった。
だから、これからもよろしくと仲直りをした。
それからは、その二人ともお喋りをしたり出掛けたり、前の関係に少しずつ戻っていった。
けれど、その二人は基本的にガウナと行動を共にしていたため、ガウナはエミリが二人と仲良くしている姿を良く思っていなかったようだ。