Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第14章 傷跡
訓練を終えた後フィデリオと合流したエミリだったが、元気が無い彼女の様子に気づいたフィデリオが事情を聞いてずっとそばに居てくれた。
女子寮に戻ってからは、幸い彼女らとは違う部屋で、仲の良い子たちばかりだったため、皆エミリのことを励ましてくれた。
「だけど、次の日……彼女たちと顔を合わせるのがすごく怖くて……正直、訓練を休みたい程でした。
でも、それじゃ逃げたことになるから。それだけは絶対にしたくなかったから……」
だから、勇気を出して訓練に出席した。
朝、食堂で会った時、また何度もその子に謝った。
謝っただけではどうすることもできない。そんなの、わかってる。
だけど、あの時、こうする以外何をすれば良いのか分からなかった。
その子は変わらず、『大丈夫』と言ってくれた。
謝るだけではもちろん罪悪感は消えず、また、その子の友達からの視線と言葉がすごく怖かった。
「……そんな中、キース・シャーディス教官は、私のことをずっと気にかけてくれました」
訓練兵団教官のキース・シャーディスは、普段はとても厳しい人だが、ずっと自分を責め続けるエミリのことを心配し、支えてくれた。
責めることなく、涙を流し続けるエミリの気持ちを聞いてくれた。彼には本当に助けられた。
だけど、それでも直ぐに気持ちを切り替えるなんてできるはずもなかった。
飛び交う陰口、冷たい視線。
消えてしまいたいとさえ、思った。
「心外なことだって、言われましたよ……」
一番、言われて苦しかったこと。
『あの子傷つけといて、どうしてあんなに普通にしていられるわけ?』
普通に?
普通でいられるわけ、ないじゃない。
どうして、そこまで言われなきゃならないの……?
それが、エミリの本音だった。
人を傷つけて平気で居られるようなやつ、それこそ人間失格だ。
そこまで心は腐っていない。でも、彼女らにはどうやらそう映っているらしかった。
「……わたし、どこまでも悪者でクズだったらしいですよ。彼女たちからしたら」
流石にあれは堪えた。
だけど、何も言えなかったのは、強い罪悪感が心の中で激しく渦巻いていたからだ。