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Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人

第14章 傷跡




「……わたしは……」


それでも、なかなか話す決心がつかない。
失恋とはまた訳が違う。

全て聞き終えた時、リヴァイはどう思うだろう。
もしかしたら、エミリを酷く醜い人間だと思うかもしれない。
けれど、それほど受けた傷は大きく、深かった。

少しだけ、身体が震える。
呼吸をするのが辛い。


「エミリ」


リヴァイがエミリを呼ぶ声がする。
これは……


「俺が受け止めてやるから。話せ」


失恋で涙を流した時と同じ、優しい彼の声。
頭を優しく撫でられる。それが心地よくて、エミリはそっと目を閉じた。


(ああ……もう、どうにでもなれ……)


開き直ったエミリは、大きく深呼吸をしてからゆっくりと語り始めた。


「……私が訓練兵の時、対人格闘術の訓練で友達に怪我を負わせてしまったことがあったんです」

「……あ? そりゃあ訓練してれば怪我くらいするだろう」


ようやく吐き出したエミリの声は、少しだけ震えていた。
そんな彼女に大丈夫だと声を掛ける代わりに、リヴァイは優しく頭を撫で続ける。


「違うんです。その子、女の子だったんですけど……彼女を投げ飛ばした場所が悪くて、その子の足が近くにあった大岩に強打して……それで、その子は左足首を捻挫してしまったんです」


あの時の光景は、今でもはっきりと頭に残っている。
ちゃんも周りを確認していれば防げた事故だった。自分の不注意で、友達に怪我を負わせてしまった。


「……それで?」


ぎゅっと布団を握り締めるエミリに、優しく続きを促した。


「わたし……本当に申し訳なくて、彼女に何度も謝りました」


何度も、何度も頭を下げた。
涙を流しながら、何度も……


「その子は、私が謝る度に『全然大丈夫だよ! 気にしないで』って、言ってくれたんです」


その子は本当に優しい子だった。男女問わず皆から愛されていた。
それ程、その子はとても綺麗な心を持っていた。

だから、エミリが深く反省していることもちゃんとわかってくれていたのだろう。エミリを責めることは無かった。
本当は怪我をした本人の方が辛い筈なのに、笑顔で『大丈夫』と言い続けていた。

無理をさせているのだと更に罪悪感が募った。しかし……──

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