Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第14章 傷跡
「…………帰らないんですか?」
「お前、また勉強するかもしれねぇだろ」
布団から顔を出しリヴァイを見上げて問えば、ギロリとまたもや鋭い視線を注がれる。
というか、リヴァイが居たら居たで逆に落ち着かないのだが。エミリはモゾモゾと寝返りを打って、リヴァイから背を向けた。
そんな彼女の背中をじっと見つめながら、リヴァイはエミリの元へ来た本当の目的を果たすべく静かに話を切り出す。
「エミリ、今日のお前はかなり様子が変だったが……何があった?」
「いや……それよりも、結局私は寝ればいいんですか? お喋りすればいいんですか? どっちなんですか?」
「喋ってから寝ろ」
「さっきと言ってること違うんですけど!?」
寝ろと言ったり喋ろと言ったり、どっちかにしてくれと文句を言いたいがそれは心の中で言っておくことにする。
それよりも、リヴァイの質問にどう答えるべきか考えていた。
正直、あまり話したくない。
話して、その後に何を言われるのか考えるとゾッとする。
怖い
エミリの心臓は、バクバクと緊張の音を鳴らす。心拍数も上がっていた。
「おい、エミリ……黙ってねぇで何か」
「聞いてどうするんですか?」
リヴァイの言葉を遮り、冷たく静かに言い放つ。
そうやって拒絶するしかないから。
「……兵長が聞いたって、どうにもならないじゃないですか」
「ああ、そうだ。過去は変えられねぇからな」
どれだけ望んでも過去に戻ることもできない。それを変えることもできないし、無かったことにすることだってできない。
「乗り越えるしかねぇ。お前もそれは解ってんだろ」
エミリは何も答えない。
それは、肯定の意。
「……前に言ったろう。誰かに自分の気持ちを打ち明けることで楽になることもある、と」
覚えのある言葉に、エミリは失恋した時のことを思い出す。
エミリがリヴァイに、ファウストやエーベルのことを打ち明ける切っ掛けとなった言葉だ。