Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第14章 傷跡
入浴を終えたリヴァイは、会議の資料を確認していた。
早くベッドに横になりたいが、明日、調査兵団本部へ戻ってから分隊長、班長を集めてまた会議を行わなければならないからだ。
今日は会議だけでなく、エルヴィンとピクシスにからかわれたせいで余計に疲れた。その事を思い出すとまた苛立ちが募る。
同時に思い出すのは、エミリことだった。
今日のリヴァイはいつも以上に変だった。
向日葵を見つめるエミリに苛立ったり、ピクシスの言葉に動揺したり、そして、正体不明だった感情が恋かもしれないという事実に驚いたり、今まで感じたものとはまた違う感情に戸惑うことが多かった。
(…………あいつ、まだ起きているか?)
確認したい。できれば、今すぐ。
けれど、勉強せずに休むよう命令したからもう眠っているかもしれない。エミリも慣れないことが続いて疲れただろうから。
それに、駐屯兵団にいる間のエミリの様子。何かに怯えているような姿が気がかりだった。
おそらくだが、店でハンネスが言っていた同期とのいざこざ、これが関係しているのだろう。
(あいつ、大丈夫か……)
脳裏に浮かぶのは、失恋をして大泣きしたエミリの姿。
あの時とは訳が違うが、もしかしたら同じように泣いているかもしれない。
もし、あの時リヴァイがエミリに声を掛けなかった、彼女はベッドで一人ひっそりと涙を流していただろう。
今回だって、心配掛けたくないがために強がっているのかもしれない。
『ちょっと……昔の嫌なことを思い出しちゃっただけです……』
食堂で昼食をとっている時、エミリはそう言っていた。とても、怖がっている様に見えた。
「……ったく、どこまでも面倒掛けやがって」
資料を綺麗に直して席を立ったリヴァイは、部屋を出てエミリがいる部屋の扉の前に立ち、ノックをして声を掛けた。