Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第14章 傷跡
訳もわからず宿へ強制送還されたエミリの表情は暗かった。
せっかくの美味しい美味しいタワーパンケーキ。
タダで食べられるタワーパンケーキ。
それをこんな形で逃してしまうなんて納得いかない。
「おい、まだそんな顔してんのか」
そして、店を連れ出した張本人の方が不機嫌な顔をしている。文句を言いたいのはこちらだというのに、何で貴方が怒っているのだと怒鳴りたい気分だ。が、相手は上司でしかも人類最強だ。やめた。
「誰のせいで怒ってると思ってるんですか……」
でもやっぱり腹立つから、ゴニョニョと小声で言い返す。
「あんだけパスタ食えりゃ十分腹も満たされただろうが」
「そういう問題じゃないんですよ! この悔しさが分からないクセに勝手なこと言わないで下さいよお!!」
スタスタと歩くリヴァイの後ろからプンスカ怒るも無視された。
それによってエミリの頬はどんどん大きく膨れていく。
「そんなことよりエミリ」
「……ああ、そんなことですか。兵長にはそんなことなんですね。本当にもう最悪です」
まだグチグチ文句を言い続けるエミリに、リヴァイは彼女の頭をガシリと片手でわしづかんで指に力を入れる。
「痛い……!! 痛いですってばあ!!」
「いいから黙って聞け」
「なんで私が怒られてるんでイダダダッ!!」
これはリヴァイの言う通り黙った方が良さそうだ。でないとこのままでは頭が割れてしまう。
「エミリ、宿に帰ったら何する予定だ?」
「え、帰ったら……? 試験勉強ですけど。勉強道具とか持ってきたんで」
エミリの返答にやはりかと溜息を吐いたリヴァイは、わしゃわしゃと彼女の頭を撫でる。
「勉強はいいが、お前は最近頑張りすぎた」
「へ」
「今日は勉強せずに休め」
「え、でも……時間が無くて」
「休めっつってんだ? 分かったか?」
再び頭に置かれている手に力を込められ痛みが走る。エミリは涙目になりながら弱々しくはいと返事をしたのだった。