Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第14章 傷跡
「兵長?」
いきなり立ち上がったリヴァイに驚いて瞬きを繰り返す。そのままエミリの後ろへ回り込んだリヴァイは彼女の首根っこを掴んで歩き出した。
「うぇっ!? ちょ、ちょっと兵長……いきなりどうしたんですか!?」
「先に帰るぞ」
「はい?!」
訳が分からず、とりあえず助けを求めてエルヴィン達の方へ顔を向けるも、エルヴィンとピクシスは笑顔でこちらを見ているだけ。その謎の笑みに体に少し鳥肌が立つのを感じながら、そのままリヴァイに店の出入口へ連行される。
「兵長、ちゃんと説明して下さいよ! まだパンケーキ食べてないのにい〜〜〜!!」
そんな悲痛な叫びを最後にリヴァイはエミリを引き摺ったまま店を後にした。
二人が居なくなった店で、ハンネスは驚いて固まっていた。
不機嫌なリヴァイの表情。そして、彼が何故エミリを連れて帰ったのか理解できずにいた。
「リヴァイのやつ、なかなか面白い反応を見せてくれる」
「そうですね」
「あの……今のは、一体……」
流石にそろそろ説明してほしい。グスタフもオロオロと汗を流している。きっと、取り残された三人中何となくでも状況を理解できているのはアンカだけだろう。
「ハンネス、お前も違和感を感じなかったか?」
「……いえ、感じるも何も俺は今日初めてリヴァイと会ったんですが……」
初対面なのだから、リヴァイの表情や感情の変化を読み取るなどできるわけがない。
「そうじゃなあ……なら、ハンネス。お前から見てリヴァイとはどういう奴に見えた? 例えば……女関係、とかのう」
第一印象を問われハンネスは考え込む。女関係ということは、つまり、彼の恋愛や女癖のことを言っているのだろうか。
「……女関係っていうのがどこまで指すのか分かりませんが……俺は、割とそういう事には冷めている様に見えました」
彼の表情や態度、雰囲気から特定の女を作らない様に感じた。どこか、女というものに冷めている気もする。
「うむ。まあ……そんな所じゃな。そんなあいつが、最近随分とエミリに入れ込んでいるようでのう」
「……え」
ピクシスの言葉から考えられるのはただ一つ。それはリヴァイがエミリに好意を寄せていると捉えるしかない。
「……マジか」
ハンネスは唖然とする他無かった。