Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第14章 傷跡
リヴァイは隣に居ないエミリの席をじっと眺める。
彼女が調査兵団に入ってからペトラやオルオだけでなく、同期や歳の近い先輩達に囲まれて元気な姿を見せていた。
だが、訓練兵時代はその逆だったらしい。少し意外だった。
「ヤケに心配するじゃないか、リヴァイ」
リヴァイの心情を察したエルヴィンからいきなり声をかけられ、はっと意識を戻す。
チラリと隣に座るエルヴィンに視線を寄越すと、口元に笑みが乗せられていた。
「……何だ?」
「いや……だが、お前が彼女を気にするのは今に始まったことでは無かったな」
「あ?」
店に移動していた時と同様に、勝手に話を進めていくエルヴィンを睨みつける。
「ほう……リヴァイがのう。その話、ぜひとも詳しく聞かせてほしいもんじゃ。酒の肴に丁度良い」
「おい、ジジイ……」
「ええ、勿論ですよ」
「エルヴィン、てめぇも勝手に決めんじゃねぇ」
完全にエルヴィンとピクシスのペースに乗せられ、リヴァイは舌打ちを鳴らす。二人のこういう所がたまに気に食わない。
気分を少しでも紛らわすために酒に口をつける。
「いい加減に認めればいいものを……」
「チッ」
「え、認めるって何を……?」
エルヴィンとピクシスの会話、リヴァイの様子。
話についていけないハンネスは、ピクシスに説明を求めるも彼はただ酒を飲み続けるだけで何も話そうとしない。
異様な空気が漂う中、エミリがハンカチで手を拭きながら席に戻ってきた。
「パンケーキ〜……あれ?」
リヴァイ達が放つ妙な雰囲気に気づいたエミリが、疑問符を浮かべる。
「えっと……何かあったんですか?」
何とも気まずい空気にエミリが尋ねるも、誰も何も答えない。チラリとハンネスに視線を寄越すが、すぐに目を逸らされた。
何なんだと目を細めて突っ立っていると、突然リヴァイがガタリと席を立った。