Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第14章 傷跡
「う〜ん……髪はどうしよう」
団服の時はいつも訓練や仕事で邪魔にならないように後ろで一つにまとめている。それ以外は大体髪を下ろしているが、これから他の兵団の上官と食事するのだ。
髪型にも気をつけるべきか、それともいつも通りでいるべきか考える。
「流石にこの服で髪まとめてるのは……ちょっと地味だよね……」
今日持ってきたものは、外出用のロングのワンピース。兵舎にいる時は基本、シャツに長ズボンというラフな格好でいるから、特に髪型も気にしてはいない。
「せっかくだし下ろそうかな」
ちょっとだけ、少しだけ、お洒落しても許されるだろう。
エミリは束ねていた髪を解いて、持ってきたブラシで背中辺りまでの長い髪を丁寧に解いていく。
普段、髪を結んでいることの方が多いが、こうして下ろしてみると少しだけ大人っぽくなった感じがして楽しい。
ブラシを台に置いてもう一度鏡に映る自分を見てみる。
「…………母さんと同じ髪型してみようかな」
小さい頃からやってみたかったカルラの髪型。今までそんなことすら忘れていたが、さっきハンネスと会ったからか、懐かしい気持ちと共に思い出したのかもしれない。
髪を横に流しブラシで綺麗に整え、そして髪留めで毛先をまとめる。
「ふふ……なんか、ちょっと楽しい」
カルラと違ってエミリは横髪があるが、それでも同じ髪型で母親似の自分の顔を見ていると、もっと鮮明に大好きな母の顔が浮かぶ。
「これで行こっと」
何だか嬉しくて、そして楽しくて、最後ににっこり微笑んだエミリは鞄を持って部屋を出た。