Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第14章 傷跡
「エミリ、よくまとめられているよ」
ノートを確認し終えたエルヴィンが、それをリヴァイに手渡しながらエミリに感想を伝える。
「本当ですか!!」
「ああ。重要な部分もラインやマークを入れてくれているから注目しやすいしね」
その他にも、軽いメモ程度のものは矢印で引っ張って囲いを作りその中に書き込んだり、議題や結果などテーマ別に印を変えているため、パッと見てわかりやいノートとなっていた。
「良かった〜」
「確かにわかり易いが、何で印を花や星にしたんだ……」
エミリのノートを見ながら紅茶を啜るリヴァイの顔は、感心半分呆れ半分といった様子だ。
しかし、エミリはキョトンとした表情でリヴァイの質問に答える。
「だって、そっちの方が目につきやすいし、それに可愛いじゃないですか」
「……前者は良いが後者の意味がわからん」
「リヴァイ、女とはそういう生き物なんだ」
エルヴィンがフォローするも、それでもリヴァイは理解できなかった。女というものは本当にたまによく分からない。
「……ごめんなさい、書いてる間にどんどん楽しくなってきてしまって。やっぱりそういうのダメでした?」
そしてエミリは話を盛大に勘違いしている。花や星マークを使ったことにリヴァイが怒っていると思っているらしい。何でだ。
「いや、しっかりとまとめられているから問題ない」
「なら良かったです!」
エルヴィンは敢えて突っ込まないことにした。リヴァイもこれ以上こんなくだらない事で討論しても意味が無い、時間の無駄だと静かに紅茶を啜る。
「では、この後の予定についてだが、夕食はピクシス司令からの誘いで外に食べに行くことになった。エミリも参加してくれ」
「…………え」
「私服に着替えたらリヴァイと待ち合わせ場所へ先に行ってくれ。私はこの書類を整理してからすぐに向かう」
「……はい。わかりました」
まさかの予定にエミリはまたもや緊張感に覆われる。あのピクシスと外食を共にすることになるなど予想もしていなかった。
急いで部屋へ戻ったエミリは、すぐに私服に着替えて失礼のないよう身だしなみを整えた。