Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第14章 傷跡
30分程掛けてようやくまとめ終わったノートを持って、エミリはエルヴィンとリヴァイが居るであろう部屋の扉へノックをする。
中から入れとエルヴィンから入室の許可を貰い、ドアノブを捻って扉を押した。
「ノートのまとめが終わったので、提出に来ました」
「ありがとう。頂くよ」
ノートを手渡すとエルヴィンはパラパラとそれを捲って内容を確認していく。
そんなエルヴィンから机の上へ広げられた大量の資料へ視線を移した。次に、その資料に目を通すリヴァイの姿が目に入る。
(仕事、量多いし大変そう……)
これだけでなく、兵舎に戻ってからも彼らには仕事がまだまだ大量に残っているはずだ。本当に休む時間などあるのだろうか。
「あ、あの……お茶でもいれましょうか?」
何か少しでも力になれることはないかと気を利かせたエミリが思いついたものが、お茶で一服だった。流石に大事な資料を指示なく手を出すわけにもいかない。
なら、少しでもリラックスできるものに限る。
「ああ、頼む」
「はい!」
エミリの問いかけに、リヴァイが資料に視線を固定したまま答える。エミリは大きく返事をしてルンルン気分でリヴァイが好きだという紅茶をいれるため、部屋に用意されている茶葉やティーポットを手に取った。
「どうぞ……」
ティーカップに注いだ紅茶をエルヴィンとリヴァイの前へ置く。
よくよく考えてみれば、ハンジをはじめとする班員の上官や先輩達には何度も出したことはあるが、二人にこうして紅茶を出すのはこれが初めてだ。
口に合うだろうかとドキドキしながらエミリもリヴァイの隣へ腰掛ける。
「……悪くねぇ」
「ホントですか!!」
「ああ……」
紅茶を口にしたリヴァイが静かに感想を述べる。
これはこの間ハンジから聞いた情報だが、彼の悪くないはつまり美味いということ。
エミリはホッと胸を撫で下ろした。