• テキストサイズ

Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人

第14章 傷跡


探るような視線を向けられる。何だか隠し事をしているみたいで後ろめたい気持ちになってきたエミリは、少しだけ、ほんの少しだけ吐き出すことにした。


「ちょっと……昔の嫌なことを思い出しちゃっただけです……でも、大丈夫です」

「あ? ここに来ただけで思い出すってことは、全然大丈夫じゃないだろうが」


正論を突きつけられ、エミリは言葉に詰まる。
本当にリヴァイは鋭い。痛いところを的確に突いてくるから。


「それに、お前の『大丈夫』は信用ならねぇ」

「……あの、この前同じこと二ファさんにも言われたんですけど」

「ならもっと自覚しろ」

「うっ……」

「まあ、リヴァイ。その辺にしておいてやれ」


もう何も言い返せない。段々と涙目になってきたエミリを見てエルヴィンが助け舟を出した。
そんなエルヴィンに感謝しながら、エミリはパンを口に含んで咀嚼する。


「エミリ、昼食が終わったら会議室へ移動する。まだ会議まで少し時間はあるが、君もピクシス司令とナイルに挨拶しておくといい」

「あ、はい。分かりました」


駐屯兵団司令官にして南側領土を束ねる最高責任者のドット・ピクシスと、憲兵団師団長のナイル・ドークは兵士に限らず一般人の間でも有名人だ。
そんな二人と挨拶を交わすことになるとは……エミリは別の緊張から今日何度目か分からない溜息を吐いた。


「君にも色々と事情はあるんだろうが、会議ではちゃんと集中してノートをとってくれ」

「は、はい! 頑張ります!!」


会議については、緊張はするが大丈夫だ。
会議室にはここにいるかもしれない同じ区出身の同期達も流石に居ることはないだろう。

調査兵団と違って駐屯兵団は憲兵団同様、兵士の死亡確率がかなり低い。優秀な人材はたくさん残っているはずだ。
それなのに、わざわざ下っ端の兵士を重要な会議に参加させることはないだろう。

もしかしたら、逆に会議の時の方が気持ちが楽なんじゃないだろうか。
いつまで経っても怖がりな自分に呆れ、自嘲するように静かに笑った。

/ 727ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp