Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第14章 傷跡
先に食堂で食事をよそってもらい、できるだけ目立たない端の方の席に座って一人もぐもぐ食べながら、エルヴィンとリヴァイが来るのを待っていた。
正直、かなり居づらい。
この中で調査兵は一人だけだからという理由も勿論あるが、それだけでなくとても落ち着かなかった。
パンやスープを口に含む度、ついつい周りに警戒してしまう。
(……多分ここには居ない、よね?)
ここへ来たことによって、訓練兵時代の嫌な思い出がどんどん鮮明になっていく。それを遮るかのように、エミリは頭を振ってご飯を食べる方に集中した。
(自意識過剰すぎるよね。うん、今は食べよう……)
自分に言い聞かせスプーンを動かした時、エミリの目の前に誰かが二人椅子に腰掛ける。突然、視界に入ってきたそれに驚いて顔を上げるとそこにはエルヴィンとリヴァイが居た。
「……え、えぇ!? い、いつの間に!!」
思わず声を上げると、エルヴィンはいつもの優しい笑みを浮かべ口を開いた。
「さっきから声を掛けていたんだが、何やら難しい顔をして考え事をしていたようだったからね」
「……そ、そうだったんですか」
全く気が付かなかった。それだけ自分のことでいっぱいいっぱいだったようだ。
これから会議だというのに、しっかりしなければ。
「すみません。気をつけます……」
「おい」
しょんぼりと顔を俯かせていると、今度はリヴァイに声を掛けられる。
なんて怒られるんだろうと少しだけ怯えながらリヴァイに向き合う。
「お前、さっきから変だぞ」
「……へ?」
「へ、じゃねぇ。えらく挙動不審じゃねぇか」
「あ、いや……それは、その……」
周りを気にしすぎていたせいか、リヴァイにまで不審がられてしまった。
そう言えば、今日は馬車に乗ってからずっとこの調子だ。リヴァイもなかなか人の感情の変化に敏感だ。違和感を感じられても仕方が無いだろう。