Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第14章 傷跡
「可愛げ無ぇな。せっかく母親に似て美人なんだから、もっと愛想良くしろよ」
「愛想が悪くてごめんなさいね」
「ったく……で、お前は何でここにいるんだ?」
再会の挨拶も終わらせ話題を転換する。
調査兵であるエミリが何故この駐屯兵団にいるのか、ハンネスが質問するとエミリはムスッとした表情のまま答える。
「三兵団合同会議に出席するため」
「は!?」
「っうるさいなぁ……何よ、いきなり大声出して」
隣からいきなり大きな声を出され、エミリは顔を顰める。耳にキーンと響いて少し頭がクラッとした。
そして、二週間前にもオルオが似たようなことをしていたなとどうでもいい事を思い出す。
「いや、だって……お前、まだ調査兵団に入って一年と半年くらいだよな……?」
「そうだけど?」
「それで会議に出席……嘘だろ」
ハンネスもフィデリオやオルオと同じ理由で驚いているのだろう。信じられないといった表情でエミリを見ている。
「まあ、ハンネスさんよりは真面目に仕事してるから」
「その言い方なんか腹立つな」
エッヘンと腰に手を当て急に機嫌が良くなるエミリを見て、ハンネスは呆れた表情を見せる。だが、実際に彼女の言っていることは事実なので何も言い返せない。そこがまた何だか悔しい。
「そうだ、私食堂探してるんだけど……」
「ああ、会議って午後からだったな。教えてやるから着いてこい」
「はーい」
ハンネスの後を着いて歩く。そこで再び周りから注がれる視線に気づいた。
一応、ハンネスは隊長だ。そんな彼と砕けた口調で会話をしていたのだ、さっきより目立ってしまった気がする。
周囲からの幾つもの視線に頭痛がしそうになったエミリは、頭を抱えたくなるのを必死に堪えてハンネスの後を着いて歩いた。