Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第14章 傷跡
「ハンネスさん……!!」
「やっぱりか! 久しぶりだな!!」
ポンポンと頭を撫でられる。
エミリとの再会を喜ぶハンネスの表情には、安堵も含まれていた。それはエミリがまだ生きている事実からのものだろう。
「本当に久しぶり。最後に会ったのって何時だっけ?」
「確か、お前が初めての壁外調査から帰ってきた後だな」
エミリが訓練兵団を卒業し調査兵団に入った後、壁外調査の前日にフィデリオとハンネスに顔を出しに行った。
あの日、必ず生きて帰って来いと何度も念押しされ、生還後は本当に無事で良かったと大泣きされた。
もうずっと前のことのように思える。
「あれからもう一年以上も経つんだね……」
「フィデリオも元気か?」
「うん。あいつもちゃんと生きてるよ」
「そうか。そりゃあ良かった」
ハンネスは、エミリが生まれる前から両親との間で親交が深く、その繋がりから物心ついた頃にはいつも世話になっていた。
その頃からエミリから見たハンネスという人間は、近所の飲んだくれ兵士だった。だが……
「驚きよね」
「何が?」
「だって、昔は兵士としても人間としても尊敬できるような、できた人間じゃ無かったのにさ……今じゃ駐屯部隊長だもんね」
「お前、もうちょっとオブラートに包むことできねぇのか」
昔、勤務中に酒ばかりを飲んでは、冷ややかな視線と辛辣な言葉を浴びせていたエミリだが、どうやら今もそれは変わらないらしい。
「寧ろ、そこは褒めるとこだろ?」
「だったら最初から真面目に働いてなさいよ」
「俺、一応お前の上官なんだが……」
「だから何?」
「あのなぁ……」
エミリはもう兵士だ。兵団という組織に在籍するようになった彼女にとってハンネスは上官にあたる。が、エミリにとってはそんなこと今更だ。
残念ながら昔の”飲んだくれ兵士”の不真面目なイメージが根付いているため、上官として敬えと言われても無理だ。